クセノポン

紀元前5から4世紀頃に生きた、哲学者であり、傭兵隊長であり、歴史家。
古典期の主要なスパルタの史料を残した著述家。

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目次
 a.研究書
 b.クセノポンの著作
 c.クセノポンが紹介されている古代の著作
 d.未読資料

注.
クセノポンに関連する記述のみ紹介(紹介というよりは感想文)。
各項目毎に著者名の50音順に表示。
国外の著者については国内の著者の後にアルファベット順に表示。
著者複数の場合は、最後尾に表示し、表題をキーとして配列。
著者名の次に出版年代をキーとして配列。
値段は参照した本に提示されたもで、現在の価格と異なる可能性あり。


研究書

  1. 高山一十著 ギリシャ社会史研究 未来社 1970年 ¥2000
     30と31頁でギリシアの歴史家の系譜を、政治史の系譜と社会史の系譜の二つ論じ、クセノポンは社会史の系譜に属する歴史家だとされている。33と34でクセノポンの生涯と、彼の心の動きの分析が行われている。38と39頁の様々な歴史家達の観点が論じられ、クセノポンの英雄崇拝的で信心深い態度が示され、44から48でクセノポンの家族観が解説されている。52から55頁にクセノポンの描くスパルタが分析される。クセノポンの社会史観の解説といったところである。

  2. ベリー著 高山一十訳 古代ギリシアの歴史家たち 未来社 1966年 ¥780
     135から144頁にトゥキュディデスに続く歴史家としてクラティポス、フィリストス、クセノポンの三人の著作が論評され、その中で136から139がクセノポンに充てられている。但し、三人の中で評価は最も低い。クセノポンは歴史家としても哲学者としても素人で、むしろ彼の成功はジャーナリストとしての成功に似ているという。ようするに、自身の回想録とも言うべき「アナバシス」は評価できると言うことである。そして、クセノポンの功績はトゥキュディデスが人物を政治的な側面からのみ見たのに対し、クセノポンは性格や個性の分析等、人となりを伝記文学に取り入れた点にあるという。

  3. 秀村欣二/久保正彰/荒井献編 古典古代における伝承と伝記 岩波書店 1975年 ¥3200
     131から159頁にクセノポンを好意的に論じた章がある。4つの節に分かれていて最初にクセノポンが近代の学者達からいかに低く評価されていたかが解説される。これらの評価は、哲学者としてはプラトンより劣り、歴史家としてはトゥキュディデスに劣るという類の物であると論じられ、この様なクセノポンの評価は必ずしも正当とは言い難いという事である。次にアテナイの弁論家イソクラテスとの比較が行われる。残りの2章は「アゲシラオス伝」の分析で、最初に「ギリシア史」と次に「ラケダイモン人の国政」との比較が行われる。「アゲシラオス伝」は個人を賛美する目的の伝記作品で、前記の作品とは目的が異なる故に同じ出来事の記述にしても、できうる限り個人の賛美に繋がるように書き方が異なっているという。クセノポンの現代における評価や、その著作、特に「アゲシラオス伝」の特徴を知るのに有用である。

クセノポンの著作

  1. クセノポン著 佐々木理訳 ソークラテースの思い出 岩波書店 1953年 ¥450
     クセノポンは若き頃、ソクラテスの弟子だった。その師の思い出や逸話を書きつづった作品。プラトンの作品と違い、自己の哲学に合わせてソクラテス像を修正することなく、単に師が行ったこと、言ったことを書きつづったものと言われ、歴史家の間では最も忠実にソクラテス像を書いた作品だと評価されているが、哲学者の間では、クセノポンは哲学的思想を全く理解できておらず、本当の意味でのソクラテス像を構築できていないと非難されている。ソクラテスの逸話集として読むのならなかなか面白い。ここから見えるソクラテスはスケベだ。

  2. クセノポン著 松平千秋訳 アナバシス 筑摩書房 1985年 ¥3500
     ギリシア軍一万人の逃避行として有名な作品。ペルシアの皇太子キュロスの反乱に参加してバビロニアにまで行った一万のギリシア兵が、キュロスの死によりペルシアの奥地に孤立し、自力でギリシア勢力圏へ帰還する物語である。この時、クセノポンは指揮官の一人としてこの遠征に参加している。それ故に自伝的要素が強く、クセノポンの人となりも分かる。戦闘場面の描写が細かく、当時の戦い方をイメージできる。やはりギリシア人は余り騎兵を重用しなかったらしい。なにせ、一万人の内、騎兵は僅か五十騎だけ。演説場面はほんとに一万人の人々にこれだけの演説したの?と言いたくなってしまうほどの内容だ。

  3. クセノポン著 古山正人訳 ラケダイモン人の国政 電気通信大学紀要2巻1号 1989年
     スパルタの国政を記した書で、スパルタを知る上で極めて重要視されている書。クセノポンは傭兵としてスパルタのアジア派遣軍に加わり、その後スパルタへ行った。その経験もこの書に生かされている。しかし、単にスパルタを称賛した書というわけでもない。第14章で、クセノポン当時のスパルタ人に対する非難が行われている。非難の論法は今のスパルタ人は昔の慣習に従っていないと言った感じである。スパルタの教育から軍事編成迄、スパルタの国政の多くが語られている。

  4. クセノポン著 田中秀央/吉田一次訳 クセノポーンの馬術 恒星社厚生閣 1995年 ¥3000
     クセノポンの「馬術」と「騎兵隊指揮官」の訳が収録されている。クセノポンの「馬術」は現存する世界最古の馬術書として知られ、馬の選び方から騎兵として戦うときの装備に付いてまで騎乗兵になるための心得をまとめた本。騎兵隊指揮官は、心得から実際の部隊編成、隊形、等々が書かれた本。騎兵隊指揮官は当時のギリシア軍制を知る上でも役に立つ。更にこの訳本は馬についてや馬術の解説があり、馬について無知でも問題ない。

  5. クセノポン著 根元英世訳 ギリシャ史1,2 京都大学学術出版会 1998−9年 ¥2800
     ペロポネソス戦争後半戦からボイオティア戦争迄を記述した原典史料。後半戦といっても、アテナイによるシシリア遠征が失敗してアテナイが不利な状態に陥り降伏し、その後、スパルタがテーベに敗れ、そのテーベも没落するに至る迄を扱っている。トゥキュディデスの戦史を継承して書かれたとも言われている。書き方はトゥキュディデスを見習っているようである。だが、親スパルタ寄りに史料の作為的な選択が行なわれているそうだ。

  6. クセノポン著 松本仁助訳 クセノポン小品集 京都大学学術出版会 2000年
     クセノポンの短編集。収録作品の内4本は他にも訳がある。残りの4本、シラクサの独裁者ヒエロンとケオスの詩人シモニデスが独裁者について論じ合う「ヒエロン」、スパルタ王アゲシラオスの賛歌たる「アゲシラオス」、財政的な面からアテナイ人への助言を記した「方法論」、狩猟の歴史から狩猟犬とか、狩猟法について論じた「狩猟について」が収録されている。。

  7. 伝クセノポン著 村田数之亮訳 アテナイ人の国家(上下) 京都大学史林 16巻3−4号 1931年
     クセノポンが書いたと伝えられる書だが、古代から疑問視されており、現在ではクセノポンが書いたのではないとの説が有力な書。アテナイの国政を論じ、その問題点を指摘して改革案を示している。政治的なパンフレットとしての意味合いがあったのではと思われる。著者は貴族よりの姿勢を示しているところから、アテナイの貴族だったのではと考えられている。

クセノポンが紹介されている古代の史料

  1. アイリアノス著 松平千秋/中務哲朗訳 ギリシア奇談集 岩波書店 1989年 ¥700
     ギリシアに纏わる話を集めた作品で、全部で454話掲載されている。政治家から遊女まで様々な人物の逸話や、国の特徴など色々な話がある。その中の一人としてクセノポンに纏わる逸話も4本ある。3巻3、17、24、7巻14に紹介されている。3本は「アナバシス」に出てくる話で、残りの一つは息子の死に臨んだ態度について述べたもので、これは「ディオゲネス・ラエルティオス著 加来彰俊訳 ギリシア哲学者列伝(上) 岩波書店 1984年」にも記されている。

  2. アテナイオス著 柳沢重剛訳 食卓の賢人たち1,2 京都大学学術出版会 1997−8年 ¥3800
    アテナイオス著 柳沢重剛訳 食卓の賢人たち 岩波書店 1992年 ¥770

     賢人たちの餐宴を描いた作品だが、引用だらけでまるで図書館でやっているみたいである。クセノポンの著作も盛んに引用されている。クセノポンに対しては「かのきわめて優雅な」、「あのみごとな」、「かのすぐれた」、「かの称うべき」、「かくも立派な」等という具合に賛辞が多い。クセノポン自身の逸話については、第5巻216Bから216Fにクセノポンの「餐宴」の間違いが指摘され、哲学者という者は虚偽を語りたがる傾向があるとする主張がなされ、第11巻504Eと505Bにプラトンと対抗関係にあったと、両者の著作を比較する形で解説がなされている。

  3. ディオゲネス・ラエルティオス著 加来彰俊訳 ギリシア哲学者列伝(上) 岩波書店 1984年 ¥720
     第2巻6章(157から166頁)にクセノポンについての記述とクセノポンの全著作の情報もある。クセノポンについてクセノポン自身が書いたこと以外の情報の多くは、この著作から導かれて物なのでクセノポンを知る上では重要な書である。全般的に好意的に描かれており、クセノポンの章をソクラテスの章の次に置くなど、哲学者としてのクセノポンもそれなりに評価しているようである。ソクラテスの章でも、ソクラテスの弟子で最も重要な人物ベスト3に入れられている。

  4. プルタルコス著 柳沼重剛訳 食卓歓談集 岩波書店 1987年 ¥450
     二世紀頃に書かれた宴会での四方山話集。この翻訳は全訳ではなく、部分訳だが、「恋は人を詩人にする」とか、「鶏と卵どちらが先か」とか、くだけた話題が主に収録されている。クセノポンはの言葉が哲学者の言葉として話題に上ったりする。序文では、至上有名な哲学者の一人として数えられている。クセノポンは宴会後に馬に乗って帰れと言うのは、帰ってから妻と交われという意味だとか、宴会で人に冷やかされるとなぜたのしくなるのかとか、色々な言葉が出てきてそれらが検討対象となっている。少なくても二世紀にはクセノポンは哲学者として知られていたと言うことがよく分かる作品だ。

未読資料

  1. 安達肆郎著 伝記作者クセノポンの経験1−4 八千代大学紀要18−21 1980−81年
  2. 桑原則正著 クセノポン「アナバシス」におけるポリス建設の意向をめぐって 西洋古典学研究27
  3. 真下英信 伝クセノポン「アテーナイ人の国制」の政治思想史的考察 慶応大学史学66−3 1997年
  4. クセノポン著 田中秀央/山岡亮一訳 家政論 生活社 1944年
  5. 世界人生論集1 クセノポン著 村治能就訳 饗宴 筑摩書房 1963年
  6. Xenophon著 訳 LOEB CLASSCAL LIBRARY No.51,52:Cyropaedia(キュロス伝) HARVARD 年 (英語・ギリシア語)

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